「あ、スザクちょっと、こっち向いて」


 の言葉にぴしりと生徒会室の空気が緊張したものにかわったのだけれど、その言葉を発した本人と、言われた当人とはそんなことにはまったく気付いてはいないようだった。リヴァルとシャーリーが目配せしあって、こそりと二人に視線をむける。椅子に座って書類の整理をしていたスザクは顔をあげてをみた。


「なに?」

「うん、ここ、目じりのあたり・・・まつげ?ついてる。このへん」

「え、ああ、ありがとう。・・・とれた?」

「うーん、ちょっとずれてる。そのへんなんだけどもうちょっと、えっと、いいや、じっとしてて?」


 言うとはパソコンに向かっていた身体をスザクのほうへ乗り出して、顔をのぞきこむように指先で目元に触れた。リヴァルがごくりと生唾をのみ、シャーリーがそれにあきれたようにつつく。がまつげをすくいあげるように取って、ほらこれ、とスザクに意味もなく見せると、スザクも意味もなく受け取って、ありがとう、とつぶやいた。


「スザクってまつげ長いよね。男の子なのに、絶対わたしより長い」

「特別得することもないけどね。長いのってそんなにいいの?」

「・・・そういうのあんまり、女の子の前で言わないように。スザクのそういうとこ好きだけど」


 がつん!と突然の派手な音にとスザクがおどろいて振り返ると、リヴァルが机の上につっぷしていた。隣にはうつむきながら肩を震わせるシャーリーもいて、がど、どうしたの、と困惑したように訊ねる。


「ごめん、なんでも、ないの。ちょっとあの、衝撃が」

「衝撃?」

「ホント、お、俺たちのことは気にすんなよ、うん。全然続けてくれていいから、」


 ばか、とシャーリーがリヴァルの頭をはたく。つづけるってなにを?律儀にくり返すスザクに、なんでもないからなんでもないない、とシャーリーは必死にごまかして、助けを求めるようにミレイに視線を送った。ルルーシュからの報告を右から左に聞いていたミレイは待ってましたとばかりに顔を輝かせて、椅子から立ち上がるとぽん、とスザクとの肩を叩いた。


「んね、リヴァルのことは放っといて、ちょっと頼まれてくんないかなあ。倉庫に資材調達に行ってほしいのよね、一人じゃ大変だと思うし、お二人で」

「構いませんけど、こっちの文書製作がまだ・・・」

「それはルルーシュに任せるから。いいわよね?」

「・・・嫌だって言ったってきかないでしょう」


 ため息をつくようにルルーシュが答えて、がスザクをみる。スザクはすこしだけ首をかしげて、まあいいか、と立ち上がった。


「じゃあ、行ってきます。行こう、

「うん・・・。じゃあルル、そっちよろしく」


 スザクとが部屋を出て行って、とたんにリヴァルとシャーリーは溜まっていた息を長く長く吐き出した。「もう、ホント死ぬかと思った!」とつぶやくリヴァルのセリフにはずいぶん心がこもっていて、それを受けるシャーリーもうんうんと何度もうなずいている。


「2人ともおおげさねえ、あんなの大したことないわよ」

「えええええ!なに言ってるんですか会長、もう、あの甘いっていうかじれったいっていうか変な空気、あたし耐えられません!」

「ホントだよ。俺らなんにもしてないのにさ、こっちが悪いことしてる気分になる感じで・・・」

「そうそうそう!そうなのよ!」


 シャーリーは首がとれてしまうんじゃないかというくらい何度も何度も縦に振って、「会長たちがおかしいんです」と口をとがらせる。まったく気にもとめていないようなミレイは、おもしろくてたまらないとばかりに声をあげて笑った。


「いいじゃない、あたしは好きよ。ああいう、誰から見ても明らかなのに、本人たちだけわかってないっていう状況?おもしろいじゃないの」

「だけど、なんていうか、教えてあげたくなるんです!あれじゃああの2人、いつまでたってもあのままですよ?」

「それはそれで仕方ないわよ、あたしたちが口出しすることじゃないわ。ねえルルーシュ」

「俺に聞かないでくださいよ・・・」


 のやりかけの仕事にさっそく手をつけながら、ルルーシュも特別興味のないように息をつく。なぜか肩身の狭い思いをしなくてはならないリヴァルとシャーリーは、ため息をつくしかないのだった。


「・・・さっさとくっついちゃえばいいのに・・・」
























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しーりーきーれー


(2007.4.23)