「スザク!ちょうどよかった、次のお休み、いつ?」


 ラウンズたちの談話室のようになっている部屋に入り、聞こえた第一声がのそれだった。スザクはそう頻繁にこの部屋に足を運ぶことがないけれど、訪れたときには大抵誰かしらラウンズの面々が使用している。ときたま仕事を持ち込むこともあったが、重量感のあるカーテンに縁取られた大きな窓から差し込む陽射しはやわらかく、誰が運び込んだのか、いつの間にか一角には豪勢な花束が飾られるようにもなって、主に女性陣が午後のティータイムを楽しむような部屋に落ち着きつつある。いま、すこし時間が出来たので寄ってみようと思ったのも、ここの空間を愛する一人である彼女がいるのではと無意識のうちに期待したからかもしれない。
 そんなが本当にいたことに内心で驚きながらも、不意打ちの言葉に、え?とそれだけ返した。窓際のテーブルについていたがだから、と立ち上がってこちらに寄ってくる。移動のときに見えた向かい側の椅子に、ジノとアーニャの姿があることにも気づいた。


「お休み。いつなの?わたし今週末にもらうつもりなんだけど、スザクも休めない?」
「え、」


 出てきた言葉ははじめと同じだったけれど、今度のそれはニュアンスが違った。驚きと、すこしの期待。からこんなふうに休日の予定を訊ねられたことは初めてだ。そこに続くのは何かしらの誘いの言葉だろうと思って、自然と湧き立つ感情を表してしまわないように気をつけながら慎重に答えた。


「・・・とれなくはない、と思う。今すこし立て込んでるんだけど、それが終われば休んでも問題ないんじゃないかな」
「終わりそうなの?」
「まあ、終わらせようと思えば」


 その返事にの顔が明るくなって、だったら、と口元をほころばせる。その次になにが続くのだろう。女の子だと、買い物に付き合ってくれないかとか、映画を観に行きたいとか?それとものことだから、ナイトメアフレームの模擬戦がしたいなどと言い出すかもしれない。けれど一緒に休日を過ごせるのならなんでもかまわないと思いながら待っていると、にこにこと微笑んでいるはぱっと後ろを振り返った。その先には優雅にティーカップを口に運ぶジノがいる。


「ジノのところに遊びに行かない?お屋敷にヴァインベルグ家専属のパティシエがいて、その方のつくるケーキがすっごく美味しいんだって!」
「・・・ジノ?」
「うん、美味しいケーキが食べたいって話をしてたら誘ってくれたの。だからスザクもどうかなって。スザク?」
「・・・・・・」


 黙り込んだスザクを不思議そうに覗き込んでくるのことを気遣うのも忘れて、む、と眉間にしわが寄ってしまう。おもしろくない。せっかくのからの純粋な誘いだと思っていたのに、そこにジノが絡んでいたというのが、いやなにもジノが嫌いだとかそんなことを言っているわけではないのだけれども。


「スザク、やっぱり休むのは無理?」
「・・・ああ、ううん。なんとかしてみる。またなにか決まったら連絡してくれる?」
「うん・・・」
「うん、それじゃあ」


 もともとあまり時間があったわけではないので、話の区切りがついたところで早めに立ち去ることに決めた。はどこか納得しかねている表情をみせているが、その後方にいるジノに「じゃあジノもよろしく」と声をかけてそのままきびすを返すと、「またね」とだけ言ってきた。それにうなずいてみせてから扉を閉める。閉めたところで数秒立ち止まってため息をついてしまったのは、なんだか自分が心の狭い人間のように思えたからだ。







「・・・ジノ。スザク、あんまり嬉しそうじゃなかったよ?」
「おっかしーな、の誘いだったら絶対に喜んで来ると思ったのに。なにかまずったのか」
「スザクもしかして甘いもの嫌いなんじゃないの?ジノがうちのパティシエで釣ろう!なんて言うから」
「なんだよ、お前がもっとスザクと仲良くなりたいっていうから協力してやったのに」
「だって・・・。ねえアーニャ、なにがいけなかったんだと思う?」
「ジノに相談した




蜂 蜜 が け エ ブ リ デ ー





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(2008.6.5)